快適な室内環境を保つエアコンは、多くの電力を消費する家電です。とくに夏や冬のピーク時には、エアコンの使用が電力需要を大きく押し上げ、二酸化炭素排出量の増加にもつながります。この記事では、エアコンを効率的に使用することの重要性や家庭・企業ができる取り組みについて詳しく解説します。
エアコンの節電と環境保全の関係
日々の暮らしに欠かせないエアコンは、快適な室内環境を保つ一方で、地球環境に少なからず影響を与えています。とくに、冷媒として使用される「フロンガス」や電力消費量の多さが問題視されており、省エネを意識することで、地球規模の環境保全にもつながります。オゾン層破壊を抑えられる
まず注目したいのが、エアコンに搭載されているフロンガスです。現在主に使われているのは、HCFCとHFCの2種類であり、なかでもHCFCにはオゾン層を破壊する塩素が含まれているため、国際的にも段階的な廃止が進められています。二酸化炭素排出の削減
家庭の中でエアコンが占める電力使用量は非常に大きく、夏場と冬場には消費量が急増します。夏に設定温度を1℃上げるだけで年間約840円、冬に1℃下げることで約1,430円節約できるとされています。電気代が下がるということは、発電に必要なエネルギーの消費が減るということであり、日本で主流とされる火力発電の二酸化炭素排出が抑制できるということです。電力の使用を抑えることが、温室効果ガスの削減にもつながっているのです。
エアコンの省エネのためにできること
総務省の統計によれば、2011年以降、家庭への普及率は90%を超え、オフィスや商業施設ではほぼすべての建物に導入されています。エアコンを効率よく使うことが、家庭にも地球にもやさしい省エネの第一歩です。無駄な出力を減らす
設定温度を極端に下げたり上げたりするのではなく「自動運転」や「弱運転」を活用することで、必要以上の電力消費を抑えられます。また、フィルターが目詰まりした状態では、冷暖房の効きが悪くなり、結果として余分な電力を使ってしまいます。月に1〜2回を目安にフィルターを掃除するだけで、消費電力を数%削減できる可能性があるのでおすすめです。さらに、室外機のまわりに物を置かないようにし、スムーズに排気できるよう環境を整えることも大切です。
加えて、使用時にはカーテンやブラインドで直射日光や冷気の侵入を防ぎ、室温変化をできるだけ小さくしましょう。
省エネエアコンに買い替える
最新のエアコンは、冷媒やコンプレッサーの効率が大幅に向上しており、従来モデルに比べて電力消費を削減できる製品があります。さらに、扇風機やサーキュレーターを併用すると効果的です。夏場であれば、冷気を部屋全体に循環させることで、設定温度を1〜2℃上げても体感温度を快適に保てます。冬場は、天井付近にたまる暖気を床付近に送ることで、暖房効率をさらに高められます。
節電の注意点
一方で、節電を意識しすぎて健康を損なうような使い方は避けなければなりません。猛暑日に冷房を使わないと熱中症の危険が高まり、冬場に暖房を我慢すると体調を崩す恐れもあります。省エネと健康の両立を意識し、無理のない範囲で温度を管理することが大切です。そんなときは、デマンドコントローラーを活用するのがよいでしょう。電力の使用量を自動で制御し、ピーク時の消費電力を抑制するなど、エアコンの運転を最適化できるので、快適さを損なうことなく省エネを実現してくれます。
エアコン業界の省エネに対する取り組み
エアコン業界では、快適さと省エネ性能を両立させる技術革新が急速に進められています。これらの取り組みは、家庭やオフィスの電力消費を抑えるだけでなく、地球温暖化防止や環境保全にも大きく貢献しています。高効率インバーター技術
従来のエアコンは、設定温度に達するとコンプレッサーを停止し、室温が変化すると作動させるという単純なオン・オフ制御を実施していたため、電力を大量消費していました。これに対し、インバーター技術を採用したエアコンは、電流の周波数を制御してコンプレッサーの回転速度を細かく調整します。最初は高速で運転して室温をすばやく設定温度に近づけ、その後は低速運転で安定した温度を維持します。
この仕組みにより、ムダな電力消費を防ぎながら、快適な室内環境を保てるようになりました。