昨今のエネルギー価格の高騰により、学校運営における電気代は大きな負担となっています。義務教育や高等教育を提供する公共性の高い施設である学校においても、コスト削減は喫緊のテーマです。そこで本記事では、学校の電気代の費用相場や内訳を解説しつつ、効果的な節電対策を紹介します。
学校の電気代の費用相場・内訳
学校の電気代は、施設の規模や設置されている設備、地域、運営時間など多くの要因によって変動します。生徒数500人規模の学校では、平均して月45万円、年間で540万円ほどかかっているとされています。学校施設の特徴と電力消費
一般的に、公立の小・中学校や高校、大学などの教育機関は、一般的な事務所ビルや商業施設と比較して、広い敷地面積をもち、体育館やプール、特別教室、照明設備など、消費電力が大きな設備を多数有しているため、電気代も高額になる傾向があります。ICT教育の影響
近年は電子黒板やタブレット端末の導入といったICT教育の推進にともない、機器の充電やサーバーの運用にかかる電力も増加傾向にあります。従来の施設維持費としての電気代に加えて、新たな電力需要が生まれています。電力料金の構成
電力料金を構成する要素は、おもに基本料金と従量料金です。基本料金は契約電力(デマンド値)にもとづいて決定され、過去1年間における最大需要電力、つまり30分間の平均使用電力が最も高かった値で決まります。従量料金は実際に使用した電力量に応じて支払う金額です。電力消費の主な要因
学校の電力消費において、大きな割合を占めるのは空調設備と照明です。なかでも、生徒や教職員が快適に過ごせる環境を維持するために大切な空調設備は、季節によって使用頻度と電力量が変わり、電気代の変動要因となります。空調設備と基本料金への影響
夏場の猛暑日や冬場の厳寒期には、冷暖房のために空調設備がフル稼働するため、最大需要電力(デマンド)が高くなる傾向があります。これが翌年以降の基本料金にも影響をおよぼすことになるのです。したがって、電気代の削減を考えるうえで、空調負荷の管理は課題のひとつといえます。契約内容や建物条件による違い
電力会社との契約内容や建物の築年数によっても内訳の比率は異なります。大規模施設であればあるほど、基本料金の占める割合が大きくなる傾向があります。電気代の構造を理解し、デマンド値をいかに抑制するかが、根本的なコスト削減の鍵となります。学校における節電対策の必要性
学校運営における電気代の高騰は、教育予算の圧迫に直結します。足りない予算は、教材の購入や老朽化した施設の修繕、人件費など、直接的に教育の質に関わる部分にしわ寄せがいく可能性があるのです。安定した学校運営と質の高い教育を提供し続けるためには、無駄な経費を削減し、限られた財源を最大限に活用することが求められます。電気代の削減は、教育環境の持続可能性を高めるための重要な経営判断といえるでしょう。たとえば、削減によって生じた余剰予算を、より高度な教育ツールの導入や教職員の研修に充てることで、教育の質の向上に繋げることが可能です。また、電力の効率的な使用は、地球温暖化対策への貢献という環境教育の一環としての側面も持ち合わせており、生徒たちに省エネルギーの意識を根付かせるよい機会にもなります。
学校の電気代を削減する方法
学校の電気代を削減するためには、日々の運用改善から設備投資に至るまで、多角的なアプローチが必要です。とくに効果的なのは、電力契約の見直しと、消費電力の大部分を占める空調設備への対策です。電力契約の見直し
まず、電力契約自体が現状の電力使用状況に合っているかを確認しましょう。電力自由化以降、多くの新電力会社がさまざまな料金プランを提供しています。学校のような施設にとって最適なプランを選ぶことで、電気代を削減できる可能性があります。空調設備と照明の更新
次に、古い空調設備や照明器具は、最新のものに比べて消費電力が大きいことがほとんどです。高効率な空調設備への更新は初期投資はかかるものの、長期的に見れば電気代削減に繋がります。とくに、照明を寿命が長いLEDに切り替えることは、消費電力の削減だけでなく、交換の手間が減るというメリットもあります。教室や廊下、体育館、グラウンドのナイター照明など、学校全体でLED化を推進することで、照明費用を下げられるでしょう。
日々の運用改善
職員室や教室でこまめな消灯を徹底したり、空調のフィルター清掃を定期的に行ったりするなどの日々の運用改善も、節電効果を発揮します。デマンドコントローラーの活用
電気代削減の効果的な方法のひとつが、デマンドコントローラー(デマンド監視制御装置)の導入です。学校の電気代は、過去の最大需要電力(デマンド値)にもとづいて決定されます。デマンドコントローラーは、電力使用量をリアルタイムで監視し、事前に設定した目標デマンド値に近づいた場合、自動的に空調機などの一部の設備を一時的に制御(デマンド制御)することで、電力のピークを抑えます。たとえば、設定値を超えそうになった際、一時的に空調機の設定温度を数度上げたり、一部の空調機を停止したりすることで、ピーク電力を回避するのです。空調の稼働が多い学校にとって、デマンドコントローラーは節電対策の切り札といえるでしょう。とくに電力需要が集中する夏場や冬場の空調負荷を効率的に管理し、年間を通じて電気代を安定的に削減することが可能になります。